まどろみ3秒前


「翠」


朝くんじゃ、ない。唐突にそう思った。私のことを翠、なんて呼ぶのは朝くんじゃない。

別の、誰か…

いつから、この人が朝くんじゃないことが嫌になったんだろう。私は、この人が朝くんであることを望んでいたのだろうか。


「起きろ」








「俺、水買ってくるわ」

「あ、うん」


―東花の、声。
―小鳥の、声…

理解した。あの「起きろ」は、現実と繋がっていたのだ。東花の「起きろ」が、私の夢に入り込んできたらしい。

シャッターの音、扉が閉まる音がした。


ゆっくりと、瞼を開く。視界は、落ち着いたクリーム色の天井が広がっていた。私を取り囲むように、回りはシャッターで囲まれている。


「すい…起きたぁ……」


ベッドの隣に、パイプ椅子に座った小鳥がいた。小鳥の目からは、涙が溢れ出ていた。嗚咽を漏らしながら、必死に涙を拭っている。


「…だ、大丈夫!?なんで泣いてるの!?」


涙を流す彼女の姿に、私は起き上がって小鳥に問いかける。頭がズキンと痛くなって、思わずめまいがした。

小鳥は、「だめ、まだ寝といて」と頑固に首を振った。「わ、わかった」と曖昧に頷いた私は、言われた通りに体を倒した。