「翠」
朝くんじゃ、ない。唐突にそう思った。私のことを翠、なんて呼ぶのは朝くんじゃない。
別の、誰か…
いつから、この人が朝くんじゃないことが嫌になったんだろう。私は、この人が朝くんであることを望んでいたのだろうか。
「起きろ」
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「俺、水買ってくるわ」
「あ、うん」
―東花の、声。
―小鳥の、声…
理解した。あの「起きろ」は、現実と繋がっていたのだ。東花の「起きろ」が、私の夢に入り込んできたらしい。
シャッターの音、扉が閉まる音がした。
ゆっくりと、瞼を開く。視界は、落ち着いたクリーム色の天井が広がっていた。私を取り囲むように、回りはシャッターで囲まれている。
「すい…起きたぁ……」
ベッドの隣に、パイプ椅子に座った小鳥がいた。小鳥の目からは、涙が溢れ出ていた。嗚咽を漏らしながら、必死に涙を拭っている。
「…だ、大丈夫!?なんで泣いてるの!?」
涙を流す彼女の姿に、私は起き上がって小鳥に問いかける。頭がズキンと痛くなって、思わずめまいがした。
小鳥は、「だめ、まだ寝といて」と頑固に首を振った。「わ、わかった」と曖昧に頷いた私は、言われた通りに体を倒した。


