廊下の窓から見える桜の木は、まだ蕾だった。もうすぐ、綺麗に桜が咲くんだろう。
桜が咲き誇ったとき、私は、どんな感情で桜を見守ることができるんだろうか。
「つっ…頭が……」
ズキン、ズキンと規則的に頭が痛くなる。視界が、ぐらくらと揺れる。壁にもたれながらも、私は、早歩きで下駄箱へ向かった。
足が重い。呼吸が辛い、息苦しい。
過呼吸になきかけていたその時、「翠!!」と誰かが私を叫んだ。
「待って、まだ言いたいことが……て、おい、大丈夫かよ、なにしてんの?」
私は振り返らずに進む。着いてこないで、とは伝わっていないのか、無視して進んでも、東花は私を心配するように顔を覗き込んでくる。
「無視すんな。大丈夫か?」
「…大丈夫」
「…言い方ミスった。しんどいだろ」
頷く他なかった。大丈夫か、は頷けるのに、しんどいかと言われたら、頷ける。言葉って、不思議なものだと実感させられる。
「止まれ。保健室行くから」
「…いい」
私はそう言って、足を進める。
「あ?黙れよ。早く止まって」
「いい。ほんと、何も熱もないから」
「わかんないだろ?そんなの」
足を止めない私を、東花は必死に止めてくる。こいつは何がしたいんだ、と苛立ってきた私は、東花に向けて言った。


