「高校ならもうすぐ、修了式なんじゃないかな。今何年生?」

「…2年、ですね」

「じゃあ、もうすぐ就職とか受験もあるんだね大変」


ふとに思った。地味にこういう、私を苛立たせてくるの、なんか朝くんに似てる。


「天塔さん。本当に、言いにくいことがあるんですが」


嫌な予感、というものが心を襲ってきた。怖くて怖くて、嫌なものが迫りくる。それでも私は、「はい」と平常に言った。


「他の患者の方なんだけどね。…その方も、症状は回復しつつあると思っていたときがあったんだ。…でも、その後らしい」

「…後?」

「1週間、眠ったんだよね?栄養分を貯めて、体が、長く眠るのに適した体を作ろうとしている。これから、もっと長く眠る、体がスリープモードに入るかもしれない」


もっと、もっと長く眠ることに、なる。

窓の先の空を見つめていると、安心させるように優しい口調で、医者は続ける。


「これでも、全力でこの病気のことについて研究しているんだ。でも、あまりにもこの病気を患った人が少なすぎる。こちら側としても、どう対処したらいいのかわからない」

「…はい」

「…でも、そんな体も、誰かたった1人の声を聞いただけで起きれるという成功例が出ている。まだ科学的な証明もできていないし、その他の手口を探しているところけど、今は、この方法しか、ない」

「…8億人ぶんの1人。無理ですよ」


笑いながら言う私に、医者は少しの間黙り込んだ。