涙を、流していた。初めて見る、お母さんの涙だった。顔はしわくちゃになり、目から出た涙は頬からカーペットの下に落ちる。
心配な表情は見慣れたが、お母さんがここまでなるのって…なにがあったの…?
静かに、お母さんはベッドにいる私をぎゅっと抱き締めた。
お母さんの温かさとお母さんの大好きな匂いがする。お母さんの体は、震えていた。
「おかあ、さん…?」
怖くて、どうしたの?とは聞けなかった。お母さんの抱き締める力が、強くなった。
「翠…あなた…3日寝たんだよ…?」
「…え」
3日。その大きさに、私はただただ絶望した。希望の反対、絶望。絶望という言い方は全然軽かった。地獄、崩壊だった。
日を跨ぐことなんて、なかった。
目覚めたら夕方、というのはあった。
でも、日を跨いで、3日…?
私は、自分の体を叩いた。叩いて、頭をグーで殴ったりした。どうして、お前の体内時計は狂ったんだと。24時間×3だ。私は、72時間もの時間を無駄にした。眠っていた。


