睡魔が襲ってきたのは、私が家へ帰ってきたときだった。時計は朝の8時になっていた。
当然ながら家族全員に心配され、お母さんは涙目になっていた。
「翠…どこ行ってたのこんな時間…ていうか朝まで…」
「警察呼ぼうかと思ってたよほんと…」
「姉ちゃん…どこ行ってたの…」
怪訝な顔をするお父さんや累に、私は安心させるよう笑みを浮かべ「ごめんごめん」と謝る。
「…もう、どこにも行かないでよ…心配するでしょう?連絡くらいちょうだいよ」
「うん、ごめんほんと」
「てかこんなに濡れて…傘もってかなかったの?寒いでしょう?シャワー浴びる?」
私を上から下までじろりと見渡す。髪も服も濡れている私を見ておかしく思うのは当然だ。
言われるがままに、私は暖かいシャワーを浴びて、ココアを飲んで一息ついた。
累やお父さんは、私がシャワーを浴びている間に既に学校や仕事に行ってしまったらしい。
「どこ行ってたの?」
「あーちょっと、友達と朝まで喋ってて」
適当に言って、私は自分の部屋へ閉じ籠った。お母さんはまだ何か言いたげな顔をしていたが、申し訳なく扉を閉めた。