心の状態に気付いて、どうにかしてやればよかったのかな。今更、そんなことを思った。
「…朝くん、裏切られたこと、ある?私、昔友達に裏切られてクソ悪口言われて」
「あー俺は裏切る派っていうグズだから」
ふふ、といたずらっぽく笑う彼に、えー最低だ、と私は笑った。
「俺、性格悪いから友達とか全部裏切っちゃった。ぜーんぜん、反省してないけど」
「…東花」
思い出して、ポツリと呟いた。その名前は、朝くんの耳に入ったのかはわからない。
「えっと、東花…ゆあ、ゆう?だったかな。知ってる?朝くんの幼なじみらしかったんだけど」
間違えてたら申し訳ないな、なんていう気持ちで言うと、「夕ね。知ってる」と彼は頷いた。
「朝くんの家に行くまでの道迷ったとき、教えてくれたのも東花で」
「そう」
「最近すごい話しかけてくれる。テストどうだった?とか。あんま意味わかんないけど」
「へぇ」
どうでもよさそうに頷く朝くんに話を進めてしまったことに気付いて、「あ、ごめん」と謝ると、「大丈夫」と首を振られた。


