まどろみ3秒前


「…私を犠牲にして、朝くんを助けたい。まあそんなこといっても、やっぱり怖くてできないかもしれないけど。でもやっぱり、2人で死ぬより1人のほうが、生きてほしい、かな」

「…ふうん」

「じゃあ、朝くんは」
 

ちゃんと考えていたのか、「俺は」となんだか嬉しそうに言った。


「断然、一緒に溺れる」

「…」

「そのひとりは、結局後悔で胸を張って生きていくことはできない。そのひとりは、いつか死にたいと思う日が来てしまうだろうから」

「…うん」

「もし、それが大好きな人で仕方のない人なら、尚更、生きる世界にその人がいないと、生きてる感覚が湧かなくなる。死ぬと同じなわけ」


大好きで仕方のない人…、


「だから、俺は、翠さんと一緒に溺れる。もし、翠さんが死ぬなら、俺も死ぬから」

「…そ、それはだめ。死なないで、生きて」

「えー無理」


その後、笑いあった。さっき雷出てたね、なんて言い合った。


あーあ、わかってしまった。

あの夢に出てきた人のことを。

あれは…


「朝くん」

「え、なに」

「苦しいまどろみの中で、あなたはヒーローにならず、一緒に、溺れてくれますか」


変な質問にも関わらず彼は、優しく笑った。

とてもとても近い距離で、桜色の唇が動く。


「もちろんですよ」


バカみたいに、ふたりで笑っていた。

ほら、言ったでしょう?

この時間が、惜しくなるんだ。