「…私を犠牲にして、朝くんを助けたい。まあそんなこといっても、やっぱり怖くてできないかもしれないけど。でもやっぱり、2人で死ぬより1人のほうが、生きてほしい、かな」
「…ふうん」
「じゃあ、朝くんは」
ちゃんと考えていたのか、「俺は」となんだか嬉しそうに言った。
「断然、一緒に溺れる」
「…」
「そのひとりは、結局後悔で胸を張って生きていくことはできない。そのひとりは、いつか死にたいと思う日が来てしまうだろうから」
「…うん」
「もし、それが大好きな人で仕方のない人なら、尚更、生きる世界にその人がいないと、生きてる感覚が湧かなくなる。死ぬと同じなわけ」
大好きで仕方のない人…、
「だから、俺は、翠さんと一緒に溺れる。もし、翠さんが死ぬなら、俺も死ぬから」
「…そ、それはだめ。死なないで、生きて」
「えー無理」
その後、笑いあった。さっき雷出てたね、なんて言い合った。
あーあ、わかってしまった。
あの夢に出てきた人のことを。
あれは…
「朝くん」
「え、なに」
「苦しいまどろみの中で、あなたはヒーローにならず、一緒に、溺れてくれますか」
変な質問にも関わらず彼は、優しく笑った。
とてもとても近い距離で、桜色の唇が動く。
「もちろんですよ」
バカみたいに、ふたりで笑っていた。
ほら、言ったでしょう?
この時間が、惜しくなるんだ。
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