まどろみ3秒前


思い出したことがあった。


「ねぇ、朝くん」

「ん、なに」


クールな顔からは想像できないほど、また猫みたいに、私の肩から顔を覗かせて私に上目遣いしてくる。


「1人は犠牲になるけどもう1人は助かるか、2人で一緒に溺れるか…どっちを選ぶ?」


電灯の明かりが一瞬ちかりと暗くなりまた戻る。壊れかけなんだろうか。このバス停自体も相当古そうだし、当然かもしれない。


「なに、その質問」


無表情で、またごろんと肩に顔を預けだした。ぴくりと心臓が、鳴った気がした。

首に朝くんの黒髪が当たってくすぐったい。


「…答えて」

「翠さんは?」


何も考えようとしていないようで、少しイラッとする。私のことを聞かれるとは思ってなくて、思わず「私?」と自分に指を指した。


「…人に、よると思う」

「じゃー俺だったら?」

「…朝くん、だったら」

「そ」


―私と朝くんが、海や川で溺れていたとする。ひとりは助かるが、もうひとりは助からない。そんな時、どうするんだろう…