まどろみ3秒前


「それも、できないんだよ私には。…楽しいとかの感情、もうなくなったから。違う、もうなくした。笑ってなくしたから」

「へぇーなんでなくしたの」

「だって……感じたら、眠るのが辛くなる」

「なんで辛くなるの」

「…っ時間が、惜しくなるんだよ…」


なんだか虐められている気分になって、刃物に刺されたみたいに、心が痛くなった。


「ごめん、翠さん。自意識過剰とか、全部嘘だから、ごめん」

「…っじゃあ…!!!」


雨の音が強くなった。ゴロゴロ…と遠くのほうで聞こえたが、そんなことはどうでもいい。


「一緒に、ずっと寝ててよ。私が起きるまで何日も何日も隣でずっと寝ててよ…」


自分でも、言った意味がわからなかった。何をメンヘラみたいなこと言ってるんだろう。


「いいよ」


はっと気付いて顔を上げた。


「俺は翠さんのためなら、何日何ヵ月何年だって隣で寝てあげる」


彼は優しく私の頭を撫でた。


「だから、ひとりで溺れようとしないで」


優しくて、低い声。私の肩の上に頭を乗せて、まるで猫みたいにごろんとする。


「一緒に、溺れよっか」


私は肩幅が広めだ。朝くんもごろんと頭を預けるなら最適なんだろうな、なんて思った。

こんな近くにいたら、呼吸がしずらい。体もあまり動かせなくなった。