「それも、できないんだよ私には。…楽しいとかの感情、もうなくなったから。違う、もうなくした。笑ってなくしたから」
「へぇーなんでなくしたの」
「だって……感じたら、眠るのが辛くなる」
「なんで辛くなるの」
「…っ時間が、惜しくなるんだよ…」
なんだか虐められている気分になって、刃物に刺されたみたいに、心が痛くなった。
「ごめん、翠さん。自意識過剰とか、全部嘘だから、ごめん」
「…っじゃあ…!!!」
雨の音が強くなった。ゴロゴロ…と遠くのほうで聞こえたが、そんなことはどうでもいい。
「一緒に、ずっと寝ててよ。私が起きるまで何日も何日も隣でずっと寝ててよ…」
自分でも、言った意味がわからなかった。何をメンヘラみたいなこと言ってるんだろう。
「いいよ」
はっと気付いて顔を上げた。
「俺は翠さんのためなら、何日何ヵ月何年だって隣で寝てあげる」
彼は優しく私の頭を撫でた。
「だから、ひとりで溺れようとしないで」
優しくて、低い声。私の肩の上に頭を乗せて、まるで猫みたいにごろんとする。
「一緒に、溺れよっか」
私は肩幅が広めだ。朝くんもごろんと頭を預けるなら最適なんだろうな、なんて思った。
こんな近くにいたら、呼吸がしずらい。体もあまり動かせなくなった。


