まどろみ3秒前


「負けた」


実感に浸る私を横目に、ポツリと彼は言った。


「…負けた?」

「俺も高校で定期テストあったから。翠さんが100点なんか、思ってもなかったから…、100とられたらもう翠さんに点数負けたし」

「え、そうなの?!いや学校のテストのレベルも違いあるだろうし、それなら自分のテスト勉強に集中してればよかったのに…なんで黙って頭脳クソな私なんか教えて…」

「いやだって、翠さん喜んでるの、見たいから」


いたずらっぽく笑ったと思えば、「教えるのっていちばん覚えやすいもんだし」と優しくカバーしてくれていた。



真っ暗闇に包まれ、電灯だけが明かりだ。川があるが、川の音がないと、川すら暗くて見えない。雨の音が、聞こえていた。


「今、何時かな」


思えばスマホを忘れてきてしまった。お母さんにも何にも言ってないし、どうしよう。明日の朝まで帰ってこないとか、絶対にお母さんは心配するだろう。容易に想像ができる。

でも、まあ…いいか。


「時間なんかどうでもいいじゃん」

「…うん、そだね」

「俺は、翠さんといる今この瞬間を生きたいから。時間なんか忘れよ?」

「…忘れる」


時間も全て忘れて。私はただ、隣で朝くんと話していよう。そう、思った。