まどろみ3秒前


「…さっき言ってたけど、あの、何を、私に無理させるの?」


しばらく雨の音が続いた。彼は黙っていた。


「もう一度聞くけど、無理させてもいい?」


私はこくんと頷いた。彼は「え?」と呟く。


「…さっきもだけど、なんで何も考えてなさそうに頷けんの。俺が無理させるとか言ってんのに。何も、思わないの」

「まあ、朝くんだし、別に」


そう何気なく言った私に少しだけ驚いた表情を見せた彼は、一息吐いた。


「翠さんの体は…、1週間も寝ても規則的に夜は眠たくなったりするの」

「うん。多分どれだけ沢山寝ても、ちゃんと眠たくはなる。1週間も寝たとしても、ね」


彼は「あー」とだけ呟いて、少し顔を上げて、雨が降る暗い雲をじっと見つめていた。


「じゃー無理させることになるか」


俺は余裕だけど、翠さんには無理をさせる。彼は、そう言っていた。珍しく、私を気遣っているようだった。


「でも翠さん、頷いてくれたしいっか」

「…え、なにが」

「…俺と朝まで、眠らずにいてくれるよね?」


朝陽を見るためには、朝まで起きなければならない。朝くんは、私と徹夜でもいいのか、私の体のことを心配してくれていたらしい。

―珍しいな、気遣ってくれてるとか。


「…朝くんは、徹夜とか余裕なの」


私が全然知らないだけで、今の高校生は徹夜が普通で余裕なのかもしれない。