「…さっき言ってたけど、あの、何を、私に無理させるの?」
しばらく雨の音が続いた。彼は黙っていた。
「もう一度聞くけど、無理させてもいい?」
私はこくんと頷いた。彼は「え?」と呟く。
「…さっきもだけど、なんで何も考えてなさそうに頷けんの。俺が無理させるとか言ってんのに。何も、思わないの」
「まあ、朝くんだし、別に」
そう何気なく言った私に少しだけ驚いた表情を見せた彼は、一息吐いた。
「翠さんの体は…、1週間も寝ても規則的に夜は眠たくなったりするの」
「うん。多分どれだけ沢山寝ても、ちゃんと眠たくはなる。1週間も寝たとしても、ね」
彼は「あー」とだけ呟いて、少し顔を上げて、雨が降る暗い雲をじっと見つめていた。
「じゃー無理させることになるか」
俺は余裕だけど、翠さんには無理をさせる。彼は、そう言っていた。珍しく、私を気遣っているようだった。
「でも翠さん、頷いてくれたしいっか」
「…え、なにが」
「…俺と朝まで、眠らずにいてくれるよね?」
朝陽を見るためには、朝まで起きなければならない。朝くんは、私と徹夜でもいいのか、私の体のことを心配してくれていたらしい。
―珍しいな、気遣ってくれてるとか。
「…朝くんは、徹夜とか余裕なの」
私が全然知らないだけで、今の高校生は徹夜が普通で余裕なのかもしれない。


