「朝陽は見れる」
空は、暗く、深海のように厚く大きな雲に覆われていた。雨の降る暗い空は、まるで、世界が海に沈んだみたいだった。
―夜が、来たんだ。
夜は、まるで沈んだ深海みたい。
「止まない雨はないって言うでしょ?大丈夫、ちゃーんと翠さんの雨は止むから」
「…いや、止まない雨はあるかもしれないし。それ、どうせ言って納得したい偽善者が言うことだから。私がいちばん嫌いな奴の」
「なにそれネガティブか。…でも絶対、この雨は、すぐに止むから」
「なんで、そんなこと言えるの?」
物語である、天気を操れるみたいな能力を持っているわけでもないはずなのに、どうしてそんなにはっきり言えるんだろう。
「俺にはわかる。そんな気がする。ちゃーんと、空は晴れる」
「…うん」
「あーあ、やっぱ信じてない」
私を見て笑う彼に、「そりゃあ、だって」と言葉に詰まる。この大雨だ。これ以上も強くなりそうなのに、止むわけがない。
「んじゃーわかった。もし雨だったら、なんか俺は翠さんの指示に従うことにする」
「…し、指示?」
「で、じゃあ晴れだったら俺の言うこと聞いてくれる?綺麗な朝陽見れたら」
「あーわかった。絶対晴れないけど」
笑みを浮かべて言うと、「ふうん」と彼は怪しげに笑った。ほんと、何を考えているのかさっぱりわからない。


