「ほんとは、翠さんと、朝陽が昇るのを見たかった。だから、ここに連れてきた」
あさひ…?ポカンと口を開ける。
案の定、雨の音がする。さっきよりも雨の音は強まっているように感じた。
「…こんな雨じゃ朝陽なんて見れないでしょ」
軽く言おうと、私は笑みを浮かべた。冗談だと思っていたのに、彼は本気のようだった。
「見れる」
「見れない」
「いや、見れるから」
「見れない」
「見れるっつってんの」
「見れないです」
一向に意見を曲げない私は、ため息混じりに笑われてしまった。
「なにその頑固なとこ。めんどくさいな」
「だって、どうせ見れないから…」
嘘うそ、なんて他人事に言いながら、彼は私の髪をくしゃくしゃに掻き回してきた。
睨み付けると、「嫌?」と、ズルいくらいに無表情で言ってくる。そんなに真顔で見られると、「嫌じゃない」としか言えなくなる。


