「俺ね。翠さんに、どうしでも伝えたいことあったんです。だから、手紙で呼び出した。それ以外、あんま方法なかったんで」
彼は、死んだような目をしていた。
透き通った先の瞳は、なんだか無気力で。
私も今、死んだような目をしているのだろうか、なんてボーッとして思った。
「やっと会えたと思ったのに。来てみたら、笑いながら独り言言いながら川から落ちようとしてたし。やばい人でしたよ?」
小さく鼻で笑いながら彼は言った。
あの、配り係の時の彼と同じだ。同じように、この人も私を笑ってバカにしている。
私は本気で、笑って独り言呟いて心病みながら死ぬ気だったのに。この、意味のわからない変な偽善者野郎が止めてきた。
「俺のためにここに来たわけじゃなくて、死ぬためにここに来たんですね。でも、俺と翠さん出会えたのって、結構奇跡じゃない?」
彼は、無邪気な子供のように笑う。
「…私は、手紙であったおちょこ橋をスマホで調べた時、画像を見たときに、軽い気持ちで、あ、ここで死のうってと思ったんです。だから、私は死ぬためにここに来ました」
自然と口から漏れた。確かに、私が死のうと思わなければここに来なかった。
これは、奇跡かもしれないと心が操られたように思った。神様かなにかは、私と彼を巡り合わせたかったのかなぁ。
はは、意味わかんない。どうでもいい。


