まどろみ3秒前


久しぶりに、あの夢を見た。

初めて、自分の声でその誰かに話せた。誰かはわからない。記憶になくて思い出せない。


―あれ、ここはどこだろう。


私の視界いっぱいに、青空が広がっていた。白い雲が呑気に浮かんでいる。そして、視界の端には桜が咲き誇った大きな木があった。

綺麗だなぁ。手を伸ばそうとしたけど、何かで後ろに縛られてるみたいに、手が伸ばせない。


そして、急に視界は変わった。


バシャッ!!と大きな音と共に背中が叩きつかれた振動があった。恐る恐ると目を開ると、私は水の中にいた。

水の中で視界がぼやけている。

体が、沈んでいく。

手を伸ばして足を動かして、足掻いても足掻いても、体は沈んでいくだけだった。

酸素がなく、息ができない。苦しい、辛い、怖い。沈んでいく、沈んでいく…

どこまでも深い海のように、私はどこまでも沈んでいく。苦しいのに、私は死ねないでいた。それが、1番苦しかった。


「っぅぐ…たすけて…」


バカみたいだ。深い水の中なんか、誰もいないくせに、そんなことを私は言う。本当に情けなすぎて、私は自分に笑っていた。

いつも通り。ずっと、これからも沈んで溺れていくんだろうな、たったひとりで。


「溺れようか」

「…っえ…」


水の中に、私ともう1人の誰かがいた。

その誰かも、一緒に沈んでいき溺れていた。


「…助けて…苦しいよ…」


私はその誰かに言った。


「一緒に、溺れよっか」


誰かは、ヒーローみたいに助けてくれない。

その誰かは、一緒に溺れると言った。

その誰かは、また、優しく微笑んだ。