まどろみ3秒前


「ねぇ翠さん。今日の最後にカッコつけてちょっと言ってもいい?」

「あ、うんいいけど」


今日の最後…そっか、もう夜か。


「俺も翠さんも、夜は大っ嫌い」

「…急に、なに」

「でも、そんな俺らは忘れてることがある」


空は、雨の匂いがするくせして、夜空には雲ひとつなく星が出ていた。ポツリポツリと少ないけれど、輝く星を繋げると星座が作れるのだろうか。

私はオリオン座くらいしか知らない。昔と変わらず星はそこに位置している。

月は昼でも見える時があるけれど、こんなに綺麗な星は、きっと暗い夜にしか見えない。

彼は、空を見上げて星を指差す。

高身長なくせに、何故か一瞬、私には無邪気なまだ小さい子供に見えた。


「夜になると、冷えて辺りが暗くなって、空が夜の色に染まる。曇りのときもあるし、今日みたいに星が出てる日もある」

「…そんなの、当たり前じゃ」

「そう。夜になると空が暗くなる、そんな奇跡の当たり前を、世界は忘れていく」

「…」

「この世界は、本当に綺麗なんだよ。朝には太陽が昇り、昼には真上に太陽があって、夜になると太陽が見えなくなって沈んでいる。夜が来るのは本当に奇跡で、すごいこと」

「…うん」

「俺は、夜が嫌い。でもやっぱ、好きになりたい」


夜風に吹かれ、「カッコつけた」と言って優しく笑う彼に、言いたいことがあった。


だけど、今この瞬間に言ってしまえば、私の前から消えて失くなってしまいそうで。