まどろみ3秒前


「一応自覚ありでやってるんでね俺だって。あーあ、翠さんに言われちゃったんだけど」


最悪、と苦笑する彼に、私は「最悪って酷い」と言って笑っておいた。彼もさすがにそこら辺の自覚はあるみたいで、少し驚いた。


「まじで後悔はしてないけどね?俺は、翠さんと本気で死ぬつもりだったんだけど」


死ぬ、なんていうワードが出てくれば少し空気が重くなるのを感じた。

笑みを浮かべていたが、あまり上手に笑えなくなっていく。彼の茶色い目には、あい変わらず私の姿が映っていた。


「でも、もう夢は変わった」

「…っえ?」


隣に歩いていた彼は急に足を止めた。周りを見ると、気づけばもう交差点だった。信号は赤だが、車は通らず静かだった。


「今は、翠さんと一緒に生きること」


嘘じゃない。本当に、心の底から嬉しい、という感情があった。生きるなんていうワードが、朝くんの口から出るなんて…


「翠さんが生きるなら、俺も生きるから」

「…私がまた、死にたくなったら?」

「その時は、もちろん一緒に死ぬけど」


いたずらっぽく笑う彼は、死ぬのも本当に何も怖くなさそうだった。本当に、朝くんは変な人で、とても不思議な人だった。