「なんで学校来なくなったのかなって思っててて。あーんな、ずっと笑ってて幸せそうな人が。聞こうとしてたんですよ」
その言葉は、私の胸を刺した。刺されてないのに不思議だ。胸が痛くてたまらない。
「…あなたは、誰?なんで、私の名前知ってるんですか?同じ、学校の人?なんで、私をここに呼び出したりしたの?」
ここで初めて、男の正体は何かと尋ねた。
「ねぇ、翠さん」
彼は私の問いに答えてくれなかった。
濡れた黒い髪、整った鼻筋、シュッとしたあご、桜色の唇、白い肌。そして、透き通った、優しい茶色い目をしていた。
改めて見ると、この男の人は、とても綺麗な人だった。雨に濡れて、更に綺麗で。
惚れない女子はいないかもしれないくらい、冗談抜きで顔が綺麗で美しかった。
何を言うのだろう、と待っていると、桜色の唇が開いた。
「俺の顔になんか付いてますか?あ、もしかして、俺に惚れたんですか?」
「は?惚れてないですけど。早く話して下さい」
なんなんだろうこの人は。ただの偽善者でナルシスト?意味がわからない。
その時、急なことだった。
彼は持っていた傘を橋に放り投げた。勢いよく傘は宙に舞い、私の赤い傘辺りに落ちる。


