まどろみ3秒前


【said Touka】



カアッカアッと呑気なカラスの声がした。廊下から窓を覗くと、もう空は暗かった。

友達でもないクラスの男子に、勉強を教えてくれとせがまれてしまい、放課後に図書館で残っていたのだ。今、やっと終わったところだった。


「はぁ…」


大きくため息を吐く。人と話すと疲れる。教えても、わかっているのかわからないような「んー」という返事しか言わないあのクラスメイトのことが、今さっき嫌いになった。


教室に荷物を置いてきていたので取りに行こうと、教室に着いて扉を開ける。


―ガラッ


「…っえ」


後ろ姿でわかった。

ゆっくりと、その人は振り返る。

その人も、俺と同様驚いた表情をしていた。


何秒も続く静寂。ひとつ呼吸をして、静寂を破るように教室に足を踏み入れた。


「…お前、なんでいんの?出てけよ」


怖いほどに静かな教室に、自分の声が響く。出来るだけ目を合わせないようにして、自分のやろうと思っていた任務を全うする。


「あー無理だけど」


低い声に、軽やかな口調。

あーあ、変わってない。以前よりも、まるで崩壊を待っているような目になっていた。本当に、俺はその目が嫌いだった。


「なにしてんの?」

「不法侵入」

「あ?わかってるそんなこと」


「目的」と強調して言った。