「お前のこと聞いてんだけど」
「あーごめん。えっと、まあまあいけたかも」
先に東花に言ってしまったと心内肩を落とした。肝心な東花は「ふーん」とどうでもよさそうだったのが私の苛つきを生んだ。
「東花は?」
「普通」
「そっか。この問題、答えなに?」
間を縮めようと言ったつもりで問題用紙を指座して言うと、「あーそれは」と答えを言ってくれた。
書いた答えと合っていたこと、賢い東花とこんな私が勉強の話をできるようになったことが嬉しくて、ガッツポーズを作った。
「…そんな風に笑うんだ」
え?と問題用紙から顔を上げると、東花は何事もないように他の問題のことを話し始めた。
―東花って、一体なにがしたいんだろうか…
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下校時刻になり、いつものように小鳥と一緒に下校する。冬は終わり、もう春が来るらしい。もう春なんて嘘みたいで、歩く足が夢心地だった。
最近は、小鳥が私を起こしてくれるんじゃないかなんて思い出していた。小鳥だけじゃない。クラスメイト、道を通る小学生やサラリーマン、工事現場のおじさんなど目がいくようになった。
別に探してないしどうでもと思っていたのに、やっぱり私はその人を探してしまっているらしい。ほんと、自分に吐き気がする。
朝くんには言ってしまったけど…


