「テスト、開始」
基本中の基本、そしていらないと思っていた応用問題、嫌いな読解や文章題。
こんなの初めてだった。スラスラと手が動いている。眼鏡をかけた朝くんの顔が蘇ってきて、問題を教えてくれてるみたいだった。
時間がなくて、いつも全部は解けない私だったが、今日は時間を残して解くことができた。
いつも何故か静かな教室に意識がいくが、今日という日は集中できた。
わからなかったり不安なところはあった。でも、空欄はなく埋めた。前の5点のときとは比べ物にならないくらいに、埋めた。
ガヤガヤとした教室。私はぼーっと教室を見渡していると、報告することを思い出した。
『テスト終わりました』
このシンプルな文章でいいかな、ビックリマークでもつけたほうがいいかな、なんて思いながら迷った末にメールを送る。
きっと学校だから、朝くんはスマホを見ないだろうと思っていたが、すぐに既読はついた。
『不法侵入して今から会いに行ってい?』
不法侵入、とわざわざ付けてくる朝くんに思わず「えー」と声が出た。
確かにテストはどうだったかを直で伝えたいのはあったけど、不法侵入してそこまで…
なんて返信するか迷っていると、「おい」と誰かに声をかけられて顔を上げると東花だった。


