「あともうひとつ、言いたいことがある」
次は数学。先生は授業に遅刻しているのか、チャイムが鳴っているのに教室に先生の姿はなかった。その事に教室がザワザワし始めている。
東花は、急に私に頭を下げてきた。
思わず「え?」と呟く。短髪の髪が揺れる。
「前に、死んだように生きんなとかめちゃくちゃ生意気なこと言った。本当、ごめん。…お前にだって、あるんだもんな。色々と」
色々と。
その言葉が、鉛のように重くのし掛かった。
「…いや全然いいよ別に。色々もないから」
本当は色々とありすぎて吐きそうだった。でも、私は隠して笑みを浮かべる。東花とは、愛想笑いをするような、そのくらいの関係性しかない。どうだってよかったから。
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―あっという間に、テストの日になった。
毎日決まって6時に起きる私は、何事もなく1日を始めて終える。テスト前日の彼との勉強時間はまるで地獄だった。
出てくるのかもわからない応用問題みたいなのも教えられ、問題を出された。意味がわからなくて、本当に、冗談抜きで吐きそうになった。
これは朝くんの学校レベルの問題じゃないか、と言ってみた結果、は?と笑顔で言われたので何も言えなくなった。


