びっくりして、肩を震わせてしまった。話すのは、迷子になって助けてもらって以来だ。
「勉強とかしてる?」
「あーうん、今からやろうかなって。そういえば、今日めちゃくちゃ休んでる人多くない?風邪、気を付けないと」
平穏を偽って笑みを浮かべた。私に話しかけてきた理由がわからない。机の中から問題集を取り出そうとした、時だった。
「なぁ」
言いずらそうに、東花は視線を斜め下に向けていた。「どしたの?」と笑みを浮かべる。
「最近、なんかあった?」
「…え、最近?」
「…ごめ、やっぱ何でもない。忘れろ」
私がしばらくポカンとしていると、東花はあくびをして読書を始めた。小説なんて好きな人だったか、なんてうっすら思った。
何でもないと言われてあまりいい気もしない。まあ、私には別にどうでもいいことらしいし、考える必要はない。
「翠」
目線は本に向けたまま、東花は言った。
「気を付けた方がいい」
「…えっ?」
「あいつ、何するかわかんないから」
あいつ…?
「早く、離れた方がいい。あいつが変なこと誘ってきたら絶対断って。んで、あいつと部屋に2人きりとか絶対だめだから」
「はは、いやなにそれ。誰のこと?」
笑ったが、大体誰のことかは察しがついていた。どうして東花があの人のことを知っているのかは、わからないが。


