「いや、不安になるとかどうでもいいんで聞かせて下さい」
私は笑みを浮かべて、医者がどんなに首を振っても尋ねた。聞きたかった。不安になるとか、そんなのどうでもよかった。
「…天塔さん、ごめんそれは」
「聞かせて下さい」
はぁ…と医者は、やれやれといった感じでため息を漏らした。
「……13年」
「じゅう、さんねんも…?」
「それだけじゃない。長く眠るからか、その人は眠ったまま、体の急な事態で走馬灯を見た。…眠りについて13年、死を間際に、やっと、起こされたんだ、奇跡的にね。…起こしてもらわなければ、最悪、その人は………」
お母さんはどうして言ったんだ、と言わんばかりの顔をしていた。
私は笑みを浮かべて立ち上がり、「ありがとうございました」ときちんと感謝を述べて診察室を出ようと扉をスライドさせた。
「あ、天塔さん!」
私が振り返ると、若い医者は優しく笑みを浮かべた。
「無理、しなくていいからね」
本当は、心が刃物で刺されたように痛かったのに、それを隠して私は平常に笑った。
私の病気は、たった1人の王子様に起こしてもらえば起きることができる。
今はまだ、そんな病気の解決方法しか見つかっていないらしいが、その病気は、治らないけど、治せることがわかった。
…ただ、
たった1人を、見つけ出すことができたら。
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