まどろみ3秒前


「本当に、奇妙な病気なんだよ。…その患者はね、その人に起こしてもらわなければ、起きられない。一生、この病気は治らないんだと僕たち医者は考えている。周期的に、何時間眠るか何日眠るか、わからない」

「あの、最高何日眠ったんですか?その、患者さんは」


どんな人なのかも知らないが、同じ病気の人。なら、聞いておきたかった。


「その患者さん、もう30歳くらいの人なんだけどね、その患者は―」


医者が口を開こうとしたその時、「先生」と、静かに黙っていたお母さんが口を挟んだ。すると若い医者も、「あっ」と口に手を当てた。


「ごめんね。不安になるだろうし、この話はもうやめようか。ほら、空は暗いからもう今日は帰りなさい」


医者は診察室から見える、小さな窓を覗いた。確かに、外は暗い。