部屋の灯りは点けず、デスクライトの灯りだけ点けると、暗闇が中まで侵入してきて、机の上以外が夜に感じた。僕はその夜に姿を紛れさせながら、開いたノートにこれからの行動を書き直す。何度か書き直したそれを、また書き直しながら最善の策を練り直した。
 この町に「緑」がつくのはもう一人居る。町内名簿で確認して、それは分かっていた。
 ただ、その子と僕は全く面識もないし雪乃とも中学が違うので、接点を作れないまま、ただ、家の場所と学校の場所を確認しておいただけで止まっていた。
 もしかすると、もう少し手間がかかってしまうかもしれない。
 自分で撒いた種なのだから仕方がないけど。本当に月ノ瀬のあの目は何とかして欲しい。
 いや、何とかしなければいけないのは自分の方か。
 ノートを閉じ、デスクライトを消すと部屋に月明かりがやって来た。まんま夜になった部屋の中で僕は引き出しを開ける。
 月明かりに照らされながら視線を合わせたら、深い悲しみが覆い被さってきた。
 こんなはずじゃなかったのに。
 そっとしまって、倒れ込んだベッドで仰向けになると、真っ暗な天井が広がった。
 悲しいかな。今回の事件で僕も少しだけ「自分」を思い知っていた。