【短】夕陽の記憶

手で覆い隠そうとしたが、手を掴まれて阻止されてしまった。ニヤニヤと笑っている彼はイタズラっ子のようだ。


「いじわる」

「可愛い水瀬さんがいけないんだよ?それとも、もっといじわるされたい?」

わざとらしく耳元で囁く彼の吐息が当たってとてもくすぐったい。

「無理!これ以上は耐えられない」

「仕方ない。今日はここまでにするか」


ホッと胸を撫で下ろしたのかつかの間。すぐにまた樋口くんの腕の中に戻ることになる。


「ちょっと!」

「ごめん。これだけはさせて。今は離したくないんだ。居心地がいいんだよ水瀬さんは」

「そんなに良いの?」

「うん。俺さ、女の子に対して苦手意識あって、中学の時から避けるように接していたんだ」

「小野寺くんから聞いたよ。私はその、平気なの?」

「うん。水瀬さんは他の子とは違う。俺のこと、真っ直ぐ見てくれるから。小野寺も同じ。外面に囚われないで、俺のことをしっかり見てくれている」

「私も最初は他の子と同じように見てたよ。頭いいな、見た目もかっこいいなって。それとは違うの?」


私のその子の違いはいまだ分からない。樋口くんが本当に求めているものは何だろうか。


「“一生懸命”なところ。目標に向かって努力する姿が他の子と違うように見えた。なにより、落ち着くんだ。水瀬さんといると」