【短】夕陽の記憶

「貰ってないよ。今日は絶対貰わないって決めていたから」

「じゃあ、私のは…?」


貰わないってもしかして樋口くんはチョコが嫌いなのかも。どうしよう。無理やり渡したみたいになっちゃった。

これで嫌われたら即別れる方向に…。


「今日は“水瀬さんからしか”貰わないって決めてたんだ」

「…えっと、それってつまり」

「ごめん。かけてたんだ。貰えることになるか、貰えないかって。もし貰えなかったら脈がないってことになるから。でもこうして貰えて嬉しいよ。ありがとう」

「良かった。本当に」

「食べていい?」

「いいよ。召し上がれ」


袋から出されたオレンジは夕陽の光に反射されて光り輝いる。


オレンジを見た瞬間、樋口くんことが思い浮かんだ。多分それは出会った日にも同じように夕陽が出ていていたから。


「美味しい。水瀬さんの言う通り、さっぱりしているね。水瀬さんも食べる?」

「じゃあ、一つだけ」

「ふふ、口開けて?」


食べさせてもらうなんて、なんか恥ずかしいな。幸いにも周りには人がいない。もし、見られたら夕陽に負けないくらい赤面してしまいそうだ。

「どう?」

「美味しいです」

「水瀬さん、顔真っ赤。夕陽越しでも分かるよ」

「えっ!?えぇ。無理、見ないで樋口くん…!」