【短】夕陽の記憶

気づかないうちにチョコが口元についていた。それを樋口くんの綺麗な指先が丁寧に取ると、自分の口元に運んで舌でぺろっと舐め取った。


舐めとった表情や仕草が妙に色気があり、さっきまで平気だったのが彼の行動で緊張がぶり返してしまった。


「口にチョコ付けちゃうなんて水瀬さんってほんと、可愛いな」

「えっ?!!」

「出会ったときから思ってたよ。一生懸命、テストの復習をしていて、仕草がいちいち可愛いなって。見ていて飽きない」

「そんなことないよ。一生懸命なのは樋口くん方でしょ?ノートの書き込みとか凄い丁寧だし。私は努力して頑張っていて、憧れちゃう」

「水瀬さんも今日まで頑張ってきたでしょ?弱音吐くことなく諦めないで。俺はそれを毎日見てきたんだよ」

「樋口くん」


改めて言われると照れくさいな。


「だからこそ、これだけは言いたい。水瀬さん、好きだよ」


胸の奥がじんわりと熱くなった。嬉しいだけでは収まりきらないほど、今、喜びに溢れている。心の奥底でどこか期待していた。


いつか彼と両想いになったらいいなって。こんなに幸せなことがあっていいのだろうか。ううん、この幸せは素直に喜ぶのにふさわしい。


なら私も応えよう。この幸せな気持ちを彼に伝えたい。