【短】夕陽の記憶

「急に走ってごめん。早く2人っきりになりたくて、焦っちゃった」


息を切らしながらも明るい笑顔が絶えない。その真っ直ぐな気持ちにまたひとつトクんと胸を高鳴らせる。


返事をするのも勇気がいて、無言のまま頷いた。


焦るなんてらしくないけど、2人っきりなりたかったって言われたら嬉しくて頬が緩みそう。今日は期待していいのかな?


バレンタインの今日、私は樋口くんにチョコを渡す。そして、告白すると決めていた。私のために時間を取ってくれた彼のためにも無駄にはできない。


それからまた少し歩いた。どうやら樋口くんには目的の場所があるらしい。


「ここだよ」


着いた先は小さなカフェ。雑誌やSNSでは見かけたことのない、いわゆる穴場だ。


中は落ち着いた雰囲気のナチュラルなもので、木で作られたテーブルやイスが特徴的だ。


「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」

「え、えーと…」


メニューには沢山のスイーツが並んでいた。テスト終わりの身には魅力的過ぎる品物だ。


「水瀬さんどれにする?」

「待って。どれも美味しそうで決められない。樋口くん、オススメは何?」

「フォンダンショコラかな」

「じゃあそれにする!」

「えっ!?本当にいいの?」

「うん!どれも美味しそうで決められないし。それに、樋口くんのオススメなら食べてみたい」

「分かった。すいません、フォンダンショコラ2つお願いします」

「かしこまりました」