【短】夕陽の記憶

“可愛い”なんて、今まで同級生の男の子に言われたことなかった。思わずニヤけてしまいそうな唇に力を入れる。しかも言われた相手があの樋口くん。嬉しくないわけない。


「だからさ、小野寺たち見てたら羨ましいなって。好きな子がいつも一緒ならどれだけ楽しいんだろうなって。ふふっ、なんか思春期なりたての中学生みたいだよな」

「関係ないよ。恋はいつでも憧れで好きな人が出来たら一緒にいたいって思うのは当たり前じゃないかな?なんて、恋人いたことないのに偉そうだよね?」

「それだけ、恋に憧れを持っているってことだ。水瀬さんは、どんな人が好み?」

「私は優しくて、人思いで、もちろん勉強やスポーツも出来る人。なんでもこなせる人ってかっこいいって思い」


あれ?これってまるで…


「へぇー。そういう人がいいんだ」


ーーまるで、私の理想の人が樋口くんみたいだ。いや、私の理想は樋口くんそのものなんだ。


困っていた私に勉強を教えてくれて、友だちを本気で叱れるくらい人思いで、勉強もスポーツも色んな人とのコミュニケーションだって、私に出来ないことを樋口くんは自然にこなしている。


その影にはたくさんの努力があっただろうけど、それを表に出さない姿は人の良さを感じる。そんな彼の人柄に惹かれたんだ。