【短】夕陽の記憶

密着している樋口くんの腕にもその熱が伝わっていきそうだ。この心臓の鼓動だって、静かな図書館なら誰でも聞こえそうなくらい大きくてうるさい。


「水瀬さんは恋人っていたことある?」

「な、ないよ。実は好きな人すらいたことないんだ」


この状況で質問してくる樋口くんは余裕があるんだろうな。私からしたらちょっとした迷惑だけど。やっぱりモテるから恋愛経験豊富なんだ。


「そういう樋口くんはどうなの?」

「俺もいたことない。水瀬さんと一緒」

「意外。樋口くんってモテるから彼女いたイメージがあった」

「俺も水瀬さん可愛いから彼氏いるのかなって思ってた。まぁ、お互いいたらこうして2人で図書館に来ることなんてなかっただろうけど」

「そうだね」