華ちゃんの言う通り。樋口くんは同級生や先生、色んな人に親しまれていて容姿も完璧。そのうえ秀才。

話せるだけでも凄いのに一緒に勉強したり委員会をしたりって周りからしたら凄いことなんだ。


「試験まであと一週間か。今日は俺がテスト作ってきたんだ。これをやれば学年末は安心していいと思うよ」


こうして2人で図書館に向かうだって私たちのひとつの習慣。これも奇跡に等しいんだろう。


「一週間か。あっという間だね」

「不安?」

「うん。また点数悪かったら、せっかく教えてくれた樋口くんに申し訳ないな」

「大丈夫。水瀬さんはこれまで頑張ってきたんだから。ずっと隣にいた俺が保証する。自信もって」


大きな手がまた私の頭を撫でて、優しい笑みを浮かべた。目を逸らして窓の方に視線をやると見覚えのある姿が映り込む。


華ちゃんたちだ。


相変わらず仲が良さそう。華ちゃんが何かを話すと小野寺くんは振り返って言葉を返しているようだ。すると高校の女子2人組が近寄ってきた。

以前まで断る素振りを見せなかった小野寺くんだけど、今回はきちんと断ったらしい。華ちゃんは彼の成長が嬉しいのか、腕に思いっきり抱きついていた。

その行動にたじだじになっている小野寺くんがなんだか可愛く見えてしまった。