校長の長々とした話が始まった。ほぼ地獄だ。
禿げで、白髪しかなくて、眼鏡をかけて、しわが目立ち、滑舌も悪く、長々と喋るクセに何も聞き取れない。
えーとか、あーとか、それでですねーとか、いちいちうるさいなあ、と思ってしまう。
そうして何とか話が終わった。5分しか喋っていなかったらしいが、わたしにとっては50分喋っていたように感じた。
そうして学年主任や生徒指導がまた長々と喋り始める。
生徒指導に関してはほぼ怒鳴りと脅ししかしていないように思える。
その後も校歌を歌い(ほぼ誰も声出してなかった)、なんとか始業式が終えた。
皆「眠い」と言いながら目を擦ったり背伸びをしている。
その中一際目立った奴が居た。龍真だ。
まさかの体育館のど真ん中で寝転んで寝ていたのだ。担任の浅野(あさの)が来て無理矢理龍真を起こす。
「うっせー、寝かせろー」
と駄々をこねる龍真。可愛いと思ってしまったのは墓場まで持っていこう。
これだと次の日まで寝てそうなので起こすのを手伝いに行く。
「龍真、起きて」
「はぁ、菜槻ぃ?」
目を閉じて寝ぼけたまま私に気付く。
「そうだよ。早く起きて」
「無理。眠いー」
「一生ここで寝る気?」
「出来んならそーしたい」
「普通にやめて」
周りの生徒からの視線を感じる。他クラスや他学年からも。
「龍真皆からめっちゃ見られてるよ」
「いーじゃん、俺人気者ー」
馬鹿げた事を言う龍真。先生達も呆れている。
「とにかく起きてよ」
「じゃあ引っ張って起き上がらして」
そうして手を上に挙げ、私の方に向けてくる。仕方ないから私はその手を掴み、思いっきり引っ張って無理矢理起き上がらせた。
「案外菜槻って力強いんだな」
そう言って笑う龍真。やっと起きる気になったらしい。
私は気付いた。周りにニヤニヤされている事に。
多分私達を相思相愛だとかカップルだとか恋しているように見えるのだろう。
周りの皆の視線がとてもうざかった。そんなことにも気付かずにニコニコしている龍真。変な奴だ。