ある春の朝、私は新品の綺麗な靴を履き、「いってきます」とお母さんに声をかけてから家を出る。
空を見上げると雪のように真っ白な雲が浮かんでいる。花がそこらじゅうの家の庭を華やかにし、蝶が楽しそうに羽ばたいている。
そんな美しく綺麗な自然が彩る田舎で私は…
「ハックション、!」
相変わらず花粉にやられていた。
今日はクラス替えの日。高一だった私は高二になった。
久々に入る学校は、少々工事されたらしく廊下はピカピカ。古くてボロボロだった木の下駄箱も、扉付きの綺麗な下駄箱になっていた。
まだクラスと出席番号が分からない為、半透明のビニール袋に靴を入れ下駄箱を後にする。
周りはやや騒がしく、「おはよう」の声が飛び交っている。すると後ろから、
「おはよ!菜槻(なつき)
と、声がした。振り返ってみると何か良い事でもあったのだろうか。にっこにこの園田(そのだ)美鈴(みすず)が居た。
美鈴とは小学一年の頃からの大親友であり、お互いの家族とも仲が良い程だった。だが、小一以外同じクラスになった事が無いのが欠点だ。
「今年こそは同じクラスにして下さい!」
と手を合わせて願う美鈴。私にとっては親友でいられるのならクラスなんてどーでも良かった。ただ、同じクラスが嫌という訳でもないので願ってはおく。
廊下に貼られたクラス分け表を美鈴と見る。
他の人達も見ている為、少々狭く見えにくい。
目を凝らして見てみると、私はB組のだった。
「あ、B組だ」と私が言うと、美鈴は「私A組なんだけど、最悪〜」と喚いている。毎年恒例の言葉な気がするのは気の所為という事にしておこう。
そうして私たちはお互いを後にして、自分のクラスの教室に入っていった。
私は「おはよう」すらも言わず、無言で教室に入る。
「おはよう」はもう少しクラスに慣れてから言おう。何故なら仲が良い人が少ないから…
黒板の張り紙を見る。今日はやたらと紙が多い。席順の紙だった。出席番号順に席を並べられるのかと思いきや、結構バラバラになっていたため私はベランダ側の一番後ろという神席だった。
席に着く。真新しい筆箱とファイルを出し、気分が上がる。新品というのはそれ程嬉しいものだ。
数分後、担任らしき男が入って来た。
「席に着けー」
と、命令口調で言い張る。私はこの命令口調が少しばかり、いや、とても嫌いだった。
その後も「起立、気おつけ、礼」この三つを強制的にやらさせる。これもまた嫌いだった。