朱莉は空を見上げる。
空を見上げているはずなのに、これから上るタワーマンションも目に入る。
しかも、ここの49階というのだから、雇用主はどれだけ裕福な人なのだろう。
「資産家、社長?もしかして、有名芸能人とか…?」
マンションを登る前に、お茶を飲み、深呼吸して、一旦休憩するとまた立ち上がる。
「エレベーター無いんかな?」
辺りを見回すと、エレベーターが視界に入る。からからとトランクを鳴らしながら、エレベーターに乗り込む。
そのとき、後ろから声がした。
「あ、ちょっと待って!」
ドアが閉まりかけていたところに足を挟んでギリギリ止めたかと思えば、誰かが何事もなかったかのように入ってくる。
「え…っと…」
流石に混乱していると、その人は焦ったように頭を掻き、朱莉に話しかけてくる。
「ごめんね、怖がらせちゃってた?」
朱莉は「いえ、大丈夫です」と無愛想に返事をする。
(てか、帽子とマスクとサングラスを着けてるなんて不審者?)
「あのさ、もしかしてなんだけど…住み込み家政婦さん?」
彼はサングラスを頭に掛けて、マスクを右人差し指で顎辺りまで下ろす。
「あ、えっと…はい。あの、蒼井さんですか?」
都会での唯一の知り合いである雇用主…らしき人に話しかけられて、怖さでブルブル震えていた朱莉の肩の震えが、ぴしっと止まる。
「そうそう!」
チャーミングな笑顔が頭にこびりつく。
マスクと帽子で薄ら隠された艶めいている黒髪。どこかで見たことのある顔だ。
でも、朱莉の頭の中にぱっと出てこない。
「俺、青葉翔太って言うんだ。ごめんねー!紛らわしい仮名使って。変だったよねー?」
あまりの驚きで朱莉は口をぽかんと開けっ放しになる。体も固まる。
記憶は朦朧では無いが、雲の上に浮かんでいるようだ。
*青葉翔太というのは、有名アイドルグループ・SPLASHのメンバーであり、朱莉の推し。青葉翔太の住み込み家政婦になるということ=青葉翔太と同棲ということだ。その事実が朱莉の頭を駆け巡り、パニック寸前になる。
「……本当にあの青葉翔太⁉︎」
朱莉が大きな声で騒いでいると、チーンという到着音と共にエレベーターが止まる。朱莉の唇に翔太の人差し指が置かれる。
「そう。だから、ここからは静かにね」
翔太は目をじっと見つめて、白い歯を見せて笑うと、先にエレベーターを降りていった。
「あ、ちょっとま…」
翔太を追いかけて、駆け足で降りる。
そこには、先程まで空高く見えていたビルやタワーが、絨毯のように見えている。ヘリポートもよく見えるし、歩く人たちが小っぽけに見える。
空を飛んでいる鳥になった気分だ。
空を見上げているはずなのに、これから上るタワーマンションも目に入る。
しかも、ここの49階というのだから、雇用主はどれだけ裕福な人なのだろう。
「資産家、社長?もしかして、有名芸能人とか…?」
マンションを登る前に、お茶を飲み、深呼吸して、一旦休憩するとまた立ち上がる。
「エレベーター無いんかな?」
辺りを見回すと、エレベーターが視界に入る。からからとトランクを鳴らしながら、エレベーターに乗り込む。
そのとき、後ろから声がした。
「あ、ちょっと待って!」
ドアが閉まりかけていたところに足を挟んでギリギリ止めたかと思えば、誰かが何事もなかったかのように入ってくる。
「え…っと…」
流石に混乱していると、その人は焦ったように頭を掻き、朱莉に話しかけてくる。
「ごめんね、怖がらせちゃってた?」
朱莉は「いえ、大丈夫です」と無愛想に返事をする。
(てか、帽子とマスクとサングラスを着けてるなんて不審者?)
「あのさ、もしかしてなんだけど…住み込み家政婦さん?」
彼はサングラスを頭に掛けて、マスクを右人差し指で顎辺りまで下ろす。
「あ、えっと…はい。あの、蒼井さんですか?」
都会での唯一の知り合いである雇用主…らしき人に話しかけられて、怖さでブルブル震えていた朱莉の肩の震えが、ぴしっと止まる。
「そうそう!」
チャーミングな笑顔が頭にこびりつく。
マスクと帽子で薄ら隠された艶めいている黒髪。どこかで見たことのある顔だ。
でも、朱莉の頭の中にぱっと出てこない。
「俺、青葉翔太って言うんだ。ごめんねー!紛らわしい仮名使って。変だったよねー?」
あまりの驚きで朱莉は口をぽかんと開けっ放しになる。体も固まる。
記憶は朦朧では無いが、雲の上に浮かんでいるようだ。
*青葉翔太というのは、有名アイドルグループ・SPLASHのメンバーであり、朱莉の推し。青葉翔太の住み込み家政婦になるということ=青葉翔太と同棲ということだ。その事実が朱莉の頭を駆け巡り、パニック寸前になる。
「……本当にあの青葉翔太⁉︎」
朱莉が大きな声で騒いでいると、チーンという到着音と共にエレベーターが止まる。朱莉の唇に翔太の人差し指が置かれる。
「そう。だから、ここからは静かにね」
翔太は目をじっと見つめて、白い歯を見せて笑うと、先にエレベーターを降りていった。
「あ、ちょっとま…」
翔太を追いかけて、駆け足で降りる。
そこには、先程まで空高く見えていたビルやタワーが、絨毯のように見えている。ヘリポートもよく見えるし、歩く人たちが小っぽけに見える。
空を飛んでいる鳥になった気分だ。
