中条先輩、近すぎます。



銃弾は鬼の脚に当たったようで、鬼はよろめき数歩後ろに下がる。

私が、防衛隊隊員が、このタイミングを逃すはずがない。

銃弾の主が誰なのか、というのは気になったけれど、誰であろうと関係なかった。

助けてくれた事実は変わらないのだから。

今すぐにでもお礼を言いたい気持ちはあったけれど、それは後でも言えるはず。


今は目の前の鬼を倒すのが先だ。


よろめいている鬼に蹴りをお見舞いする。

私は腕技よりも足技の方が得意なんだ。
 
ズザザッと砂埃を上げながら地面に打ちつけられる鬼。


───ドンドンドン!!


狙いを定めて立て続けに引き金を引くと、無事“目”に命中したようで、鬼は消えていく。


消える時、声を上げながら消えていく鬼もいるけれど、今回の鬼は静かに、微かに微笑みを浮かべて消えていった。

消える間際でそんな表情をする鬼は見たことがなくて、一瞬戸惑ってしまった。

まぁ、見間違いかもしれないし、その表情の意味を確かめる術はないんだけど…。