中条先輩、近すぎます。


朝と同じように電車に乗り、駅から家までの道のりを歩いていた時。


───ブーッ、ブーッ、ブーッ…

左腕につけていたスマートウォッチが震えた。


出動要請だ。


場所を確認し、すぐに走り出す。


幸いにも、そこは人気のない裏道だった。


別に見られたくないとか知られたくないとか、そういうんじゃないけど…人がいると、やりづらいから。

それは一般人でも、隊員でも同じこと。

私の場合、相手に合わせて動くのが面倒で、出来るだけ任務は一人でこなしたいタイプ。

まぁ、そんなのは人によるけども。




よく、漫画で“ジャキッ”なんて音と共に銃を構えることがあるけど、現実世界でそんな音はしない。

ただ、静かに狙いを定める。

油断すれば待っているのは死。

防衛隊は、そういう組織なのだ。

だって、鬼は……。


人を平気で殺す。



そこには、体長五メートル程の赤い鬼が、いた。