学校指定のカバンを持ち、玄関のドアノブに手をかける。

「行って来ます」

「行ってらっしゃーい」

私が通う誠城高校は、今時珍しい制服がある高校だ。

深緑色のネクタイ、紺色のブレザーに深緑と紺のチェックスカート。

最寄り駅から5駅先にあって、そこから更に数十分歩いた先にある。

いつもと同じように電車に揺られ、10分ほど歩くと、校舎が見えてくる。

生徒たちが吸い込まれるようにして校舎に入っていく。

私も例に漏れず校舎に入り、外靴から上靴に履き替え、階段を上った。

すぐに見えてきた二年一組の教室のドアを私は迷いなく開け、中に入る。

いつもと何も変わらない、ガヤガヤとうるさい教室。

騒いでいるクラスメイトを尻目に、私は自分の席に向かう。

荷物を全て引き出しにしまいカバンを机の横にかけ、一息ついたその時。


「ねぇねぇ、三年の中条先輩の噂聞いた!?」

と、前方の席を占拠している派手な女子達の会話が耳に入ってきた。