「私は、自分より他人の命を優先するとか、そんな難しいことは考えてなくて…。」

「分かってるよ。でもらそれを無意識で出来ちゃう彩葉ちゃんは強くて優しいんだな〜って俺は思ったけどね」

「っ……」

その言葉は、素直に嬉しかった。

「そんなの……それに気づいた先輩の方が優しくてすごいと思います。」

思ったことをそのまま伝えると、先輩は少し驚いた様子でこちらを見た。

「それに、今日生きて帰って来られたのは先輩のおかげです。もし私1人だったら、子供たちを守りきれなかったし、鬼に殺されていたかも知れません。でも、今日は先輩がいたから……先輩が子供たちを逃がしてくれたから、先輩が鬼を撃ってくれたから、今私は生きてるんです。」

本当に、今日は先輩がいてくれてよかった。

「……うん。俺も、今日1人だったら多分そうだったと思う。彩葉ちゃんがいてくれてよかった。
ね、抱きついていい?」

「…何言ってるんですか?頭おかしくなりましたか?抱きついてきたら蹴り倒しますよ」

どうして今の会話の流れで抱きこうと思ったんだこの先輩は……。

「あはは、冗談だよ、冗談。あの彩葉ちゃんの蹴りは痛そうだったからなぁ…」

「痛いですよ。試してみます?」

「遠慮しておきます」

一緒に闘ったからなのか、何なのか。

先輩と少し仲が縮まった様に感じながら、私は先輩の隣に並んで帰路についた。