中条先輩、近すぎます。


後ろからは、嫉妬やら好奇やら今日1日で幾度となく向けられた視線を感じた。

まぁ、全部先輩のせいなんだけど…。

手をつないで歩く私達は、はたから見れば恋人同士に見えるだろう。

一言も喋らず数分歩いたところで、流石に沈黙が気まずくなった私は口を開いた。

「…先輩、いいんですか?」

「え、いいってなにが?」

本当に分からないという顔をしてこちらを向いた先輩。

「……私と一緒に帰って」

「えー?いいに決まってるじゃん。なんで?」

あまりにあっけらかんと答えられて、私は思わず言葉に詰まる。

「だって、先輩モテモテだし人気者だし…。中条先輩にとって私は、昨日初めて喋った同じ防衛隊隊員の後輩ですよね? 手なんか繋いで一緒に帰ってるとこ見られたら、付き合ってるんじゃないかって噂されちゃいますよ…?いいんですか?」
 
聞きたかったことを全部吐き出すと、少しすっきりした。


「俺は別に、彩葉ちゃんと付き合ってるって噂されても気にしないけど…」
 
ぱっと手を放される。


「彩葉ちゃんは嫌だったよね、ごめんね?」