中条先輩、近すぎます。


「………」

にっこりと笑顔を浮かべている中条先輩が何を考えているのかなんて、相変わらず分からない。

それでも、今のこの状況がかなりめんどくさいものだということはわかった。

だって、周りの女子達から視線をバシバシ感じる。

好奇、嫉妬、羨望。

全部、目の前にいるこの無駄に顔がいい先輩のせいだ。

「中条先輩、なんでここに…」

「えー?そんなの決まってるじゃん」

ごくり、と息を飲む。人数の割に静かすぎるその場に、先輩の声は響いた。


「彩葉ちゃんのことが気になったから、待ってたんだよ」 


「………はぁ」


「「「キャーーーーッ!!!!!?」」」

もう恒例となってきた女子達の歓声。

確かに、お昼休みの時にそんなような事を言ってた気もするけど…。

その嘘くさい笑顔を見るに、絶っ対、本心じゃない!

思わず後ずさりすると、先輩は私が後ずさりした分だけ距離を詰めてくる。

それを何回か繰り返していると、ドン、と背中に固いものがあたった。

振り向くと、そこには壁。

前を向くと、中条先輩の顔。