中条先輩、近すぎます。


◇◆◇


あの後、中条先輩とのことについて何か聞かれるかと思っていたけれど、私の性格もあってか誰にも何も聞かれなかった。

帰りの支度を終えて、教室を出る。

階段を降りている途中、

「中条先輩が玄関にいるんだって!!」

「はやくはやくー!」

女子たちが勢いよく階段を駆け下りていった。

中条先輩、という単語が聞こえた気がして、やっぱり先輩は人気者なんだと言うことを実感する。

下駄箱に着くと、大勢の女子たちがいた。

「相変わらずかっこいい…!!」

「せんぱーいっ、こっち向いてくださーい!」


「「「「「キャーーーーーッ!!」」」」」


私の目の前には、大量の女子達とその奥に見える中条先輩(らしき頭)。


……先輩って、やっぱりめちゃくちゃモテるんだなぁ…。


「先輩っ、誰か待ってるんですか?」

「んー…まぁ、ちょっとね」

その声に、どきりとする。  

先輩に見つかったら面倒なことになりそうだと足早にその場を去ろうとするも、中条先輩に群がる女子達で上手く先に進めない。

すごい通行の邪魔だなぁ、と思っていると、「…あ」という先輩の声が聞こえた気がした。

空耳かな、と思ったけど、それは空耳じゃなかったみたいで。  




「彩葉ちゃん、遅いよ」