中条先輩、近すぎます。



先輩は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、固まった。 


こういうとき少女漫画とかなら、主人公はヒーローの言葉の意味が本気で分からないんだけど…。


残念ながら私は、鈍感な少女漫画の主人公ではない。


「…ぷ、あははっ!」


堪えきれないといった様子で笑い出した先輩。


……え、今笑う要素あった…?

若干引きつった笑みを浮かべる私。


「はは、そんな直球で聞いちゃう?」

私のさっきの発言には、否定も肯定もしない。

よく分からない人だ、と思う。

先輩は、完璧な…計算され尽くされた様な笑顔を浮かべた。



───キーンコーンカーンコーン


授業開始五分前を知らせるチャイムがなる。


「あ、そろそろ帰らないと。じゃ、またね彩葉ちゃん!バイバーイ」

「え、ちょっ…」

そう言ってあっさりと去っていった中条先輩。

ほんとに、なんで来たんだろう…。

そんなこと、考えても分かるわけない。


周りの視線が痛かったけれど、私は気にせずお弁当を急いで食べ進めた。