中条先輩、近すぎます。



「……え」

 どうして先輩がここに……?

私の声は周りのざわめきにかき消され、誰にも聞かれず空気に溶けた。 

周りの視線を痛すぎるくらい感じる。

そんな中、関係ないと言わんばかりに堂々と教室に入ってくるその人。

「おーい。彩葉ちゃーん?」

顔の前でふりふりと手を振る中条先輩。

かっこいい人は何をしてもかっこいいのだから、顔がいい人は得だと思う。

手に持っていた箸を揃えて置いてから、私は口を開いた。


「……中条先輩…何かあったんですか?」


さっきまでのざわめきが嘘のように、シンと静かになった辺りに、私の声が響いた。


中条先輩はいつもと同じ笑みを浮かべて、一言。



「用なんか特にないよ?ただ彩葉ちゃんに会いたかっただけ」

「え…」


「「「「「「「「キャーーーッ!!!!!?」」」」」」」」
 

直後、静寂が破られそこら中の女子達から歓声が上がる。

「えっまって中条先輩かっこよすぎ……!!」

「まじそれな!!!」

「てか、鈴木さんと中条先輩ってどういう関係!?」

「さっき、“彩葉ちゃんに会いたかっただけ”って言ってたよね…!?」

「まさか付き合ってる!?」

「顔がいい…」