九郎の発言に驚きを隠せないめぐみに、九郎は淡々と口にした。


九郎「数年前、僕は傷だらけのルカと出会った」


〇回想、数年前


道端に力無く倒れているルカ。


それに駆け寄る九郎。


九郎「大丈夫?」


傷だらけのルカに手を差し伸べる九郎。


ルカ「・・・お前・・・俺が怖くねぇのかよ・・・バケモンだぞ、俺は。人間とは違う。耳だって違ぇ、しっぽも、牙だってある。怖いだろ、普通」


九郎「だって、辛そうな顔してた」


ルカ「!」


九郎の言葉に目を丸くするルカ。


そして、フッと諦めたように笑う。


ルカ「・・・水、寄越せ。喉が渇いた」


九郎「うん、待ってて」


〇回想終わり


九郎「・・・そのまま、ルカの怪我が治るまで仲良く一緒に過ごしてた。・・・僕も、その時はもののけとも仲良くできるって思ってたから」


うつむきながら、過去のことを語る九郎。


それを、黙り込んで聞き入るめぐみ。


ルカ「だがなぁ!そいつは3年前!!俺の恋人を滅した!!仲良くしてぇとか言ってたのにだ!!」


九郎を指さしながら、怒りを爆発させるルカ。


めぐみ「なんで・・・滅したの?」


九郎「・・・彼女が、僕以外の人に危害を加えたからだよ。僕だけなら良かったけど・・・一般人に、危害が加わるようなら、放っておけないから」


めぐみの問いに、少し戸惑いながら答える九郎。


ルカ「何が理由であろうと、俺の大切な人を奪ったテメェは許さねぇ!!地獄の底まで追いかけて、敵を討つって決めてんだ!!」


そういうと、手を前に出しブツブツと何かを唱え始める。


すると、突如として大量のもののけが姿を現した。


めぐみ「!(1度にこんなに・・・!?こんなこと、初めて・・・!!)」


ポーチに手を伸ばし、お札を取りだすめぐみ。


めぐみ「護符(ごふ)よ、その力を持ちて悪しきを滅せよ!」


手当り次第にもののけを払っていくめぐみ。


それを見て、ルカは九郎を見つめた。


ルカ「テメェ、その能力この小娘に渡したのか?」


九郎「・・・」


ルカを睨みつけるだけで答えない九郎。


ルカ「へぇ・・・キスしねぇと移らねぇ能力を、あの小娘にねぇ・・・。そんなに大事か」


ルカは、沈黙を肯定だと考え、口を開く。


ルカ「・・・なら、コイツを殺してテメェにも同じ目にあってもらおうか!!」


手のひらに電気を集め、球体の電気をもののけを払い終えためぐみに向けて放った。


九郎「!めぐみ!!」


遠くから手を伸ばす九郎。


だけど、九郎の手は届かない。


九郎の声でめぐみが振り向く。


でも、すぐにめぐみの体に球体がぶつかった。


めぐみ「あぁっ!?」


体をのけぞらせ、その場に倒れ込むめぐみ。


めぐみ「っ・・・!(か、体が・・・痺れて動かない・・・!?)」


ルカ「この短時間でもののけを全員倒したのは、さすがの腕だが・・・まだまだだなっ!!」


めぐみに近付き、腹部に蹴りを入れるルカ。


めぐみ「うぐっ・・・!」


蹴られた勢いで九郎の近くまで吹き飛ぶめぐみ。


九郎「やめろ!!」


九郎がめぐみの前に立ち、ルカを睨みつける。


九郎「めぐみ、僕にキスして!僕が何とかするから!」


めぐみ「・・・いや、だ」


痺れる体を起こしながら、九郎の言葉を拒否するめぐみ。