〇カフェ内


注文してからしばらく経って、ようやくパフェと各自頼んだ飲み物が来た。


店員「お待たせしました。カップル限定パフェとブラックコーヒー、紅茶になります」


カタン、と音を立てながらそれぞれが九郎とめぐみの前に置かれる。


その横に置かれたパフェ用のスプーンは1個だけ入っていた。


めぐみ「(で、デカ・・・思ってた数倍はデカイな・・・)」


店員「では、ごゆっくりどうぞ」


驚いているめぐみをよそに、店員は去っていく。


九郎「お待ちかねのパフェが来たよ」


そういうと、スプーンをめぐみに差し出す九郎。


めぐみ「(九郎、本当に食べないのかな。1人で食べ切れるかな)ありがとう」


スプーンを受け取り、パフェを食べる。


口に入れた途端、めぐみの表情がパァっと明るくなる。


めぐみ「美味し〜!」


クリームを口の端に着けながら食べ続けるめぐみ。


そんな彼女を見て、コーヒーを飲みながら微笑む。


めぐみ「そういえばさ、ずっと気になってたんだけど・・・なんで九郎っていつも私のもののけ退治に付き合ってくれてるの?」


コーヒーに口をつけていた九郎だったが、めぐみの一言でカップを口から離す。


九郎「・・・僕の責務だから、かな?」


めぐみ「責務?」


頭にハテナを浮かべながら九郎の言葉を復唱する。


九郎「僕の家系って、昔からもののけを払うのを生業(なりわい)にしてたんだ。とは言っても、年に1回ぐらいの頻度だったみたいだけどね」


コーヒーのカップを指で撫でながら、ポツポツと話し始める。


九郎「昔の僕はもののけを見ることが出来る特異体質だったのが、すごく嫌だったんだ」


めぐみ「(あ・・・私と同じだ)」


九郎の話を聞きながら、幽霊やもののけが見えてしまった時の光景を思い出すめぐみ。


九郎「だけど、ある日を境に、僕の原因でもののけが大量に境内に現れるようになった。だから、僕が頑張らなきゃいけないんだ。今はめぐみにやってもらってるから、危険がないようにそばにいるの」


めぐみ「九郎が原因って・・・それって──」


めぐみが九郎に原因について聞こうとする時、九郎が身を乗り出してめぐみに向かって手を伸ばす。


めぐみ「!」


九郎「クリームついてる」


めぐみの唇についていたクリームを指で拭い取る。


そして、座りながらについたクリームを舐めた。


めぐみ「なっ・・・!?(口についてたクリームを・・・!?これ、か、関節キスじゃ・・・!?)」


九郎「やっぱり甘いな」


苦笑しながら口直しと言わんばかりにコーヒーを飲む九郎。


めぐみ「なっ、なっ・・・!?」


九郎「ふふっ、関節キスになっちゃったね」


慌ててるめぐみに対し、イタズラが成功した子供のように笑う九郎。


めぐみは顔を赤くしてうつむきながら、気を紛らわせるためにパフェを食べ始めた。