〇服屋


服屋の中に入り、商品を見回している。


めぐみ「(どれもこれも可愛い服ばっかり・・・動きやすそうな服あんまりないな)」


服を見ながら考え事をする。


九郎「めぐみ、いい物あった?」


後ろから着いてきている九郎が、めぐみの肩越しに聞いてくる。


めぐみ「動きやすい服はまだ見つかってないかな。可愛い服はいっぱいあるんだけどね」


その場で取っていた服を九郎に見せながら、困ったように笑うめぐみ。


九郎「へぇ、めぐみに似合いそうな服だね、それ」


めぐみ「私も気にはなってるんだけどね。可愛すぎる気がして。スカートなんて滅多に履かないし」


商品を戻しながらほかの服も見るめぐみ。


九郎「めぐみ、すごく可愛いから似合うと思うよ」


めぐみ「っ・・・」


淡々と言われた言葉、だけどめぐみにとっては感情を揺さぶられたらしく持っていた服を落としてしまう。


九郎「?めぐみ?」


めぐみ「なっ、なんでもない!ぼーっとしちゃっただけ!」


落ちた服を拾い上げ、元の場所に戻そうとする。


めぐみ「(キスしろだのなんだのって言われてはいたけど、可愛いって初めて言われた・・・!!いや、話の流れ的にお世辞だろうけど・・・!!落ち着け・・・あれはお世辞、あれはお世辞・・・!!)」


ワタワタと動揺して動きがぎこちないめぐみを見て、九郎は愛おしそうに微笑む。


九郎「もしかして・・・僕が可愛いって言ったから動揺してるの?」


めぐみ「!」


ギクッ、と動きを止めるめぐみ。


めぐみ「そ、そんなんじゃないし!本当に考え事してぼーっとしてただけだから!(なんでこういう時の勘は鋭いの!?)」


九郎「ふふっ、慌てる姿も可愛いね」


余裕な表情でめぐみを見つめる九郎。


めぐみ「うるさい!」


いてもたってもいられず、九郎に背を向けるめぐみ。


そのまま服を探し続ける。


めぐみ「(九郎は、私の事からかって言ってるだけ、他意はない他意はない・・・!落ち着け、自分・・・!)」


九郎「ふふっ」


めぐみの様子を見ながら、微笑む九郎。