〇神社、境内


九郎「コウモリ系のもののけは、目が見えていない。今も、さっきの攻撃で対象を倒したと思い込んでる」


めぐみ「だから攻撃してこないんだ」


その場でしゃがみこんで声をひそめて話す九郎。


九郎「でも、音には敏感だよ。僕が音を立てて気を逸らすから、背後からこっそり狙って」


めぐみ「で、でもそんなことしたら九郎が狙われちゃうじゃん」


九郎のことを心配するように九郎の横顔を見るめぐみ。


九郎「あの程度の攻撃なら避けられるから平気だよ。・・・まぁ、僕にキスしてくれるなら、僕1人で退治できるんだけど」


めぐみ「っ、それは・・・」


のぞき込むようにめぐみの顔を見る九郎。


九郎と目が合ってしまい、ふいっと逸らすめぐみ。


九郎「僕にキスするのは・・・嫌?」


めぐみ「当たり前でしょ・・・!」


声を抑えながら九郎を見るめぐみは顔を赤くしていた。


九郎「・・・そっか」


愛おしそうなものを見る目でめぐみを見ながら答える九郎。


九郎「じゃあ、僕が囮(おとり)になるから、その隙にもののけを滅して」


めぐみ「(九郎を囮にするのはちょっと気が引けるけど・・・)わ、わかった。気を付けてよ」


九郎「大丈夫だよ」


不安そうなめぐみに、微笑みながら立ち上がる九郎。


そして、もののけに向かって走り出して石を投げる。


もののけは九郎の投げた石に気付き、九郎に向かってかまいたちを放つ。


攻撃をヒョイと避け続ける九郎。


めぐみ「(九郎のおかげでもののけが背中を向けた!今のうちに・・・)」


ゆっくり、でも確実にもののけに近付くめぐみ。


そして距離を詰め、お札を取り出す。


めぐみ「護符(ごふ)よ、その力を持ちて悪しきを滅せよ・・・!」


小声で呟いたあと、お札が光りだす。


背後からもののけに向かってお札を投げつける。


シャアァ、と咆哮を上げながら光に包まれて消えていくもののけ。


もののけの影で見えなかった九郎が、膝に手を付いて肩で息をしながら汗を拭っているのが見えた。


めぐみ「(良かった・・・滅せた)九郎、大丈夫?」


ホッと息を着くのと同時に、九郎に駆け寄るめぐみ。


九郎「平気だよ。怪我もしてないし」


体を起こしながら微笑む九郎。


めぐみ「・・・ありがとう、九郎のおかげで退治できたよ」


安心したような表情を浮かべ、少し首を傾げながら九郎を見る。


九郎「どういたしまして。じゃあ・・・お礼にめぐみからキスしてもらおうかな」


めぐみ「しません!!」


冗談っぽくキスをねだる九郎に、ムキになって答えるめぐみ。


めぐみの返答にクスクスと笑う九郎。