演奏がピタッと止まって如月さんが尋ねてくる。心臓がバクバク音を鳴らす。そうだよな、これって盗み聞きってやつだもんな。返事をしようかしいまいか迷っていると、
「誰かいますか.…?」
と、違う声が聞こえる。会話聞いていましたっていうわけにもいかないしなあ。仕方ない。涼は扉を開けた。
「どうしたー?」
先生にそう聞かれる。何か言わないと、そう思った涼は
「ば、絆創膏を、もら、いに来ました。」
咄嗟に出たのがこれしかなかった。もちろんケガなんかどこもしていない。それでも盗み聞きしていたことを正直に言うよかマシだ。
「絆創膏ね〜、あ、あったあった。サイズどれがいいかな?ちょっと中入ってもらってもいい?」
なんだって。中に入る…ってことは如月って人見れるじゃん! ちょっとした好奇心をもって保健室に入った。
「失礼しま―――」
びっくりして固まってしまった。
切れ長の目、スッと通った鼻筋。いわゆる美形の人が座っていたんだ。
服装は体操着。その上に白のパーカーを羽織っている。そして腕の中にはアコギが。何より一番驚いたのが、髪色。
アッシュブラウンっていうのか?灰色っぽいような、茶色っぽいようなそんな色。怜斗も地毛が茶色っぽいがここまで明るくはない。こっちはいかにも染めてるって感じの色。
隣の相談室の椅子に座ってこちらの様子をうかがっている。一瞬バチっと目が合う。けどすぐに逸らされた。
この人が…如月ナツキ?
絆創膏をもらって帰ろうとしたときだ。
「あ、いたー!」
怜斗が急に現れた。後ろには恭弥も。
「やっと見つけた…ってうおっ⁈」
「どうし……っ⁈」
2人は如月ナツキを見ると声を上げた。
「お前、知り合い⁈」
怜斗が指さして言う。普通聞くかよ!!
「失礼しました〜」
恭也が状況把握したのか2人を外に引っ張り出した。
